助川久美子とのコラボレーション
 助川久美子というアーティストは、二つの意味で「プリズム」だ。
ひとつは、自分で曲を作り、自分の声で歌い、楽器も自分で演奏するというスタイル。しかもそれらのパフォーマンスがどれも、常にある一定のクオリティ以下には決して落ちないという点。
もうひとつは、そうしたいわゆるシンガーソングライターと呼ばれる表現者たちが陥りやすい「マンネリ」の罠には決してはまらず、むしろジャズサウンドあり、フォークやロックの曲調あり、カントリーウェスタンあり、そうかと思えばケルトやジプシー、ラテン系、ひいてはアフリカンまで、次から次へとワールドワイドな引き出しを繰り出してくるという点だ。
それがどれだけ類稀なことか、この人と付き合っていると、ついつい忘れがちになってしまう。この人の音楽活動の端緒がベーシストにあり、そこに曲作りが加わり、続けてヴォーカリストとしての魅力が加わり、さらにギター演奏が乗っかってきた、という事情にもよるのだろうが、いずれにしろこれほど多面的で刺激的なアーティストは滅多にいるものではない。そもそもこの人のルーツはどこにあるのか、掘り下げれば掘り下げるほど底なしなのだ。
 作詞家としてひとたびコンビを組めば、勢いこちらのモノ作りも多面的にならざるを得ない。しかも、この人のサウンドに身も心もどっぷりと浸れば、自然に言葉が出てきてしまう。そうして出来上がった作品は、一編の小説や映画に匹敵するようなストーリー仕立ての大作あり、賛美歌あり、唱歌あり、気恥しくなるようなラブソングあり、哲学的な表現ありと、バラエティに富んだものとなる。 まあ、歌う方は大変だと思うが、いずれにしろどんな光をあてようが、プリズムは輝く。